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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1633号 判決

被告人

森崎城

主文

原判決を破棄する。

被告人株式会社森崎組を罰金参万円に。

被告人森崎城を罰金壱万円に処する。

被告人森崎城が右罰金を完納し得ないときは金弐百円を壱日に換算した期間同人を労役場に留置する。

理由

弁護人山田丈夫の控訴趣意第一点について。

原判決が被告人等に対する犯罪事実の認定につき「被告人森崎城の当公廷における判示同旨の自供及び岐阜県知事告発書の記載に徴して之を認める」と説示していることは所論の通りである。而して右知事の告発書は単に当該関係機関の右事件に関する意見判断を表示した書面に過ぎないものであつて、採つてもつて右事実認定の証拠とするに適しないものと解すべく、従て原判決は結局被告人森崎城の自供を唯一の証拠として犯罪事実を認定し被告人等を有罪としたのに外ならないものに帰するので所論の如く違法のものと言わねばならぬ、故に論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れないものとする。

(弁護人山田丈夫の控訴趣意第一点)

原判決は採証上に違法がある。即ち、原判決は犯罪事実を認定する証拠として、「被告人森崎城の当公廷に於ける判示同旨の自供及び岐阜県知事告発書の記載に徴して之を認める」とあつて被告人の自供の外に岐阜県知事の告発書を証拠に援用し之によつて犯罪事実を認定すれども岐阜県知事の告発書は検察官の起訴状と同一性質のものであつて之れを司法警察官の意見書とその性質を同じくするものである。従つて之れは何等証拠能力のないもので検察官の起訴状や司法警察官の意見書は証拠とならないと同様本件に於ける岐阜県知事の告発書は証拠能力がないものと云はざるを得ない。訴訟関係人がその提出並に証拠として異議があつても亦之れに異議を云わなかつたとしても証拠能力には何等消長を来たすものでないから原判決は被告人の自供の外に岐阜県知事の告発書を証拠としても前述の如く証拠能力のない岐阜県知事の告発書は証拠と云う事が出来ない以上原判決は被告人の自供のみを以て犯罪事実を認定した結果になるので之れは憲法並に刑事訴訟法の大原則に違背するものと断ぜざるを得ない原判決は此の点に於て失当である。

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